自律神経って何? 交感・副交感神経のしくみをわかりやすく解説

まず、こんな質問をさせてください
「今すぐ、あなたの胃腸の動きを止めてみてください。」
…止められませんよね。
そうなんです。胃や腸は、あなたが「動け」と命令しなくても、勝手に動いています。心臓も、肺も、血管も。眠っている間も、ずっと。
この「自分では意識しなくても、身体を動かしてくれている仕組み」を担っているのが、自律神経です。
自律神経は、身体の「OS」
自律神経は、体内外のさまざまな変化を察知して、身体の状態を自動的に整えてくれています。
- 気温が上がれば汗をかいて体温を下げる
- 緊張すると心拍数を上げてエネルギーを集める
- 食事をとれば消化器官を活発にする
- 夜になれば眠りの準備をする
パソコンで言えば、WindowsやMacOSのような「OS(基本ソフト)」にあたります。
アプリを動かすのも、画面を表示するのも、すべてOSが裏で支えているように、自律神経も意識の届かないところで身体全体を支えています。OSが不安定になるとパソコン全体がおかしくなるように、自律神経が乱れると身体のあちこちに不調が出てくる。まさにそういうイメージです。
交感神経と副交感神経、2つのスイッチ
自律神経には、大きく2つの働きがあります。
交感神経(アクセル) 昼間や活動中、緊張・興奮しているときに優位になります。心拍数が上がり、血圧が上がり、筋肉に血液が集まります。「闘うか、逃げるか」のモードです。
副交感神経(ブレーキ) 夜間やリラックスしているときに優位になります。消化が活発になり、心拍数が落ち着き、身体が回復に向かいます。「休んで、修復する」モードです。
この2つが、状況に応じてバランスよく切り替わることが、心身の健康の基本です。
唯一、自分でコントロールできる方法がある
胃や腸は、自分の意志では動かせません。心臓も、血圧も、自分では止められない。
でも、自律神経を自分でコントロールできる方法が、ひとつだけあります。
それが、「呼吸」です。
呼吸は不思議なもので、ふだんは無意識に行われていますが、意識すればゆっくりにも、速くにも、自分でコントロールできます。自律神経の中で、唯一「意識と無意識の両方にまたがっている」のが呼吸なのです。
私が整体の現場でいつもお伝えしていること、それはこれです。
息を吸うと、身体は「緊張」する。 息を吐くと、身体は「ゆるむ」。
緊張した場面で「ゆっくり深呼吸して」と言われた経験、きっとあると思います。あれは感覚的な話ではなく、れっきとした理由があります。特に吐く息を長めにすると、心拍数が落ち着き、身体がゆるんでいくのを実感できます。ぜひ一度、試してみてください。
「腹式呼吸」じゃないとダメ?
「深呼吸は腹式呼吸でしないといけない」と思っている方も多いかもしれません。
たしかに、スポーツや芸事の世界では腹式呼吸が推奨されます。身体が揺れにくく、安定するからです。
でも、日常生活においては胸式でも腹式でも、どちらでも構いません。
それよりも大切なのは、呼吸の「種類」を気にすることではなく、「ゆっくり吐く」をただ実践すること。
難しく考えなくていいんです。気づいたときに、ふっと息を吐いてみる。それだけで、身体は少しゆるみはじめます。
人間は、太陽のリズムで生きている
もう少し大きな視点で見てみましょう。
人間は地球上の生き物です。長い歴史の中で、太陽の動きに合わせて生きてきました。
- 朝、太陽が昇ると交感神経が優位になり、身体が目覚める
- 夜、太陽が沈むと副交感神経が優位になり、身体が休む
これは本能的なリズムで、何万年もかけて刻み込まれたものです。
現代の「夜の明るさ」が、身体のリズムを狂わせている
ところが、電気の発明によって、現代の夜は昼間のように明るくなりました。
江戸時代の人々は日が沈めば自然と眠り、日の出とともに起きていました。照明は豆電球ほどの明るさの油皿が精一杯。夜は「暗くて当たり前」の時代でした。
それが今は、深夜でも煌々とした照明の中にいる。スマートフォンの画面が寝る直前まで目に入る。工場は夜通し稼働し、コンビニは24時間営業。
身体のリズムからすれば、これは大きな「ズレ」です。
若いうちは乗り越えられる。でも中高年になると…
20代の頃は夜勤も乗り越えられます。身体にエネルギーの余力があるからです。
しかし40代・50代になると、そうはいきません。長年の夜勤を続けてきた方や、昼夜逆転の生活をしてきた方の多くが、慢性的な不調を抱えています。
私のところに来られる中高年の方に多いのが、こんな症状です。
- 頭痛・めまい
- 首・肩のこり
- 胃腸の不調
- 睡眠障害
- なんとなくだるい、疲れが取れない
病院で検査しても「異常なし」と言われる。でも確実に何かがおかしい。
その「何か」の正体が、多くの場合、自律神経の乱れです。
自律神経は「生き方」を映す鏡
自律神経が乱れる原因はひとつではありません。夜の光だけでなく、ストレス、人間関係、思考のクセ、そして呼吸のしかた…さまざまなことが絡み合っています。
でも共通して言えるのは、自律神経は「あなたの毎日の過ごし方」をそのまま反映するということです。
身体の不調は、身体だけの問題ではない。そのメッセージを、自律神経は静かに伝えてくれています。
次回は、自律神経と「緊張」の深い関係についてお伝えします。
