朝、起きられない中学生が抱えていた「本当の問題」

中学校に、ほとんど通えていない中学生が、当院でセッションを受けています。
いわゆる「不登校」の状態です。
朝、起きられない。
体が鉛のように重く、頭痛に悩まされる。
本人は、学校をサボりたいわけではありません。
むしろ、行きたいのです。
先生とも話したい。
友だちとも会いたい。
授業も受けたい。
しかし、体が言うことをきかない。
自分ではコントロールできないのです。
自律神経の問題だけでは説明できない違和感
自律神経の観点で見ると、
彼は副交感神経が優位になりすぎていて、
朝に必要な「交感神経への切り替え」がうまくできない状態にありました。
細身でスラッとした体型ですが、
運動量が少なく、筋力も低下しています。
これまで、
・インナーマッスルを刺激するセルフケア
・体を目覚めさせる簡単な運動
なども指導してきました。
しかし、大きな改善は見られませんでした。
正直なところ、私自身も悩んでいました。
セッション中に漏れた、ひと言
ところが、前々回のセッション中、
何気ない対話の中で、彼がふと、こんな言葉を口にしました。
「自分は……悪い人間だと思います」
一瞬、胸が締めつけられました。
さらに話を聴いていくと、
彼はこう感じていたのです。
・義務教育を受けられていない
・家に閉じこもっている
・みんなと同じようにできていない
「そんな自分は、悪い人間だ」と。
彼は、無意識のレベルで、
完全に自分自身を否定していました。
自分を責め続けると、体は動かなくなる
自分を責める思考が続くと、
人のエネルギーは、まるで穴の空いたバケツのようになります。
どれだけ休んでも、
どれだけケアをしても、
エネルギーが溜まらない。
そして何より、
自分を信用していない状態では、
体をコントロールできなくなっていくのです。
これは、怠けでも、甘えでもありません。
「事実」と「思い込み」を分けてみる
そこで私は、彼に問いかけました。
「事実と、思い込みを分けてみようか」
彼はすぐに答えられなかったので、
一緒に整理してみました。
事実
- 学校に行けていない
- 義務教育を十分に受けられていない
- テストを欠席している
- 出席日数が足りず、内申点が下がる可能性がある
ここまでは、確かに事実です。
では、
「自分は悪い人間だ」というのは事実でしょうか。
彼は、誰かを傷つけたわけでもない。
いじめをしているわけでもない。
犯罪を犯したわけでもない。
それでも彼は、自分を「悪」と決めつけていました。
彼が背負っていた、重すぎる思い込み
なぜ、そう思うのかを尋ねると、
彼はこう答えました。
「義務教育は税金で成り立っている。
人のお金で運営されているのに、
それを受けていない自分は悪い人間だと思う」
とても真面目で、優しい考え方です。
でも、果たして本当にそうでしょうか。
事実として
彼は、行きたくないから行かないのではありません。
朝、起きられない。
体が重くて動けない。
それが、今の事実です。
彼は、悪い人間ではありません。
彼に足りなかったのは「自分を癒す力」
薬は、症状を一時的に和らげることはできます。
しかし、それは表面に浮いたアクをすくうようなものです。
根本にあるのは、
「自分は悪い存在だ」という思考。
彼は、
自分で自分を癒すことができていなかったのです。
思考が変われば、
体の反応は、必ず変わっていきます。
この少年の回復は、
ここからが本当のスタートだと感じています。
