不安が「形」を持ち始めたとき、回復はもう始まっている

「理由はよくわからないけれど、不安がある」
「このままでいいのか分からない」
そんな状態で来院される方は少なくありません。
身体は重く、気力も湧かず、
横になっている時間が増える。
眠っているわけでもないのに、起き上がれない。
でも、いちばんつらいのは
「何が原因なのか分からない」
という状態かもしれません。
先日、10週間のセッションを終えられた方がいらっしゃいました。
この方も、最初は漠然とした不安に苛まれていました。
ところが、セッションの最終回。
その方は、こんな言葉を口にされました。
「最初に来た頃は、よく分からない不安だったけれど、
今は、以前の仕事を辞めたことへの未練ばかり考えている気がします」
一見すると、
「良くなっていない」
「むしろ後悔が強くなっている」
ようにも聞こえるかもしれません。
ですが、私はこう感じました。
不安が、形を持ち始めた。
漠然とした不安から、具体的なテーマへ
回復の初期段階では、
不安はとても曖昧です。
・なぜ不安なのか分からない
・何が怖いのか説明できない
・ただ、落ち着かない
この状態は、とても消耗します。
ところがある段階に入ると、
不安は「具体的な何か」に姿を変えます。
・あの選択は正しかったのか
・辞めなければよかったのではないか
・過去の出来事が頭から離れない
これは、悪化ではありません。
整理が始まったサインです。
不安の向きが変わるとき
その方の場合、
最初は「未来」に対する不安でした。
これからどうなるのか。
このままで大丈夫なのか。
ところが最終回では、
不安の矢印は「過去」に向いていました。
過去を振り返り、
「あの時こうしていれば…」
と考えてしまう。
苦しさは同じでも、
向いている方向が違います。
これは、
頭の中で時間軸が整理され始めている
状態でもあります。
「執着」に気づくという変化
さらに印象的だったのは、
その方がこんな問いを口にされたことでした。
「これは、執着なんでしょうか?」
この問いが出てくること自体が、
大きな変化です。
なぜなら、
・自分の状態を客観的に見ようとしている
・誰かに正解を求めるだけの段階を超えている
からです。
答えを急ぐ必要はありません。
問いを持てるようになったこと自体が、
次の段階への入口なのです。
今は「何もしない」を選ぶ時期もある
回復の途中では、
「休んでいていいのだろうか」
という焦りが必ず出てきます。
真面目で、責任感が強い人ほど、
何かしていないと不安になります。
けれど、
身体と心には
「動く時期」と「ゆるむ時期」
があります。
水が自然に流れるように、
今は流れに任せる時期もある。
無理に答えを出さなくていい。
無理に前に進まなくていい。
身体をゆるめることは、
回復の大切な一部です。
回復は、気づきから始まる
回復とは、
いきなり元気になることではありません。
・自分の不安に形が見えてくる
・思考のクセに気づき始める
・問いを持てるようになる
こうした小さな変化の積み重ねが、
やがて大きな変化につながっていきます。
「何も変わっていない」と感じる時ほど、
水面下では、確かに動きが起きています。
心整体 いきいき堂では、
ただ症状を追いかけるのではなく、
その方の回復のプロセスそのものを
大切にしています。
不安が形を持ち始めたとき、
回復はもう、静かに始まっています。
