不登校の中学2年生が、手品で“主役”になる日が来た話

不登校の中学2年生の男の子がいます。
無口で、シャイ。
初めて会った人の前では、ほとんど言葉を発しません。
けれど、この子には特技があります。
それは 手品(マジック)。
手品をさせると、彼はまるで別人のようになります。
表情が変わり、声が出て、言葉にリズムが生まれる。
私はいつも、その変化に驚かされてきました。
12月30日の感謝祭に、彼が出演することになった
12月30日、ある会社が毎年開催している「感謝祭」があります。
今年、その場に彼が パフォーマーとして出演することになりました。
きっかけは、私と道心寺の副住職とのご縁でした。
感謝祭を主催されている社長さんをご紹介いただき、
彼の話をしたところ、
「ぜひ出演してもらおう」と、快く返事をしてくださったのです。
今日はそのご挨拶と、段取りの打ち合わせ。
社長さん、副住職、そして彼。
皆さん初対面でしたので、私も同席しました。
シャイな少年が、手品を始めた瞬間
ひと通り自己紹介が終わったあと、
「せっかくだから」と、彼が得意の手品を披露することになりました。
緊張していたと思います。
あとで聞くと、「手が震えていた」と言っていました。
でも、不思議なものです。
やっている最中、そんな様子はまったく見えませんでした。
手品を見せるときの言葉選び。
間の取り方。
観る人との距離感。
これは私の個人的な感想ですが、
とても中学2年生とは思えない“魅せ方”を持っていると感じました。
結果は――
拍手喝采。
社長さんも、社員の皆さんも、大喜びでした。
「とりは、彼でいこう」
感謝祭当日は、
漫才師の方、けん玉パフォーマーの方も出演されるそうです。
その中で、社長さんがこう言ってくださいました。
「とりは、この子でいこう」
ありがたい話です。
本当に、よくやったと思います。
本番ではありませんでしたが、
目の前で人が喜ぶ姿を見て、
私まで胸が温かくなりました。
あとは12月30日の本番を迎えるだけ。
風邪だけは引かないでほしいと、願うばかりです。
「学校に行けていない自分は、悪い人ですか?」
彼は、こんなことを私に言いました。
「学校に行けていない自分は、悪い人ですよね」
胸が、少し詰まりました。
確かに、彼は学校に行けていません。
朝、起きられない日もあります。
成績の評価は低く、内申点も足りません。
高校進学の現実も、厳しいでしょう。
それは、事実です。
でも――
悪い人ではありません。
彼は「その可能性は何%ですか?」と聞いてきましたが、
そんな数字はありません。
あなたは、決して悪い人ではない。
学校がすべてではない。でも、社会は甘くもない
社会性を学ぶ上で、学校は大切な場所だと思います。
行けるなら、行ったほうがいい。
でも、どうしても行けない子もいる。
それが現実です。
最近の学校は、無理に叱ったりせず、
温かく見守ってくれているそうです。
それは、とても素晴らしいことだと思います。
もし封建社会であれば、
彼はきっと、封じ込められていたでしょう。
でも、ここは自由社会です。
人はそれぞれ、違った能力を持っています。
すべてを均一にする必要はありません。
大人にできること
彼は、学校教育が合わないかもしれません。
けれど、
大きく飛躍する可能性は、十分にあります。
もちろん、社会は甘くありません。
それは彼自身の責任です。
だからこそ、
できるところまで認めて、
できるところまで応援する。
それが、大人の役目だと私は思います。
晴れやかな一日
ここまで書いたことは、
あくまでも私の私観です。
けれど、今日という一日は、
とても晴れやかな気持ちになる、素晴らしい日でした。
この出来事に、心から感謝しています。
ありがとうございました。
